「妊娠したい」だけど出来ない。そんな女性なら不妊専門クリニックに通院していたりして、体外受精の正しい知識や体験があるので、いかに大変な治療で、いかに高額な費用を支払い、膨大な時間を犠牲にして子供を授かる為に努力しているかは想像出来るでしょう。
しかし、不妊経験のない方であれば不妊治療など老若男女問わず他人事です。

どうして体外受精までしないと妊娠しないの?

体外受精で授かった子供って障害のリスクがあるんじゃないの?
不妊治療をしていると、経験の無い方からはこんな事を言われる事もあります。
産休・育休制度を利用する女性がいる一方で、制度の利用をフォローする女性の中には、子どもが欲しくても授からなかった女性、人知れず不妊治療を続けている女性、死産や流産を経験している女性も多くいます。
制度の利用者にばかりスポットライトが当たり、ワーママばかりが大変な思いをしていると思われがちですが、その前の段階、つまり妊娠する前の不妊治療中の女性の思いや苦労にももう少し理解をして頂けるとありがたいものです。
そんな苦労をし、子供がいないからと肩身の狭い思いをしているのに、せっかく授かったわが子を授かった過程だけで偏見を持たれてしまうのは本当に辛い事です。
体外受精のリスク
2018年には体外受精児の出生数は56,979人にまで増加し、実に15人に1人が体外受精児となっています。
しかし、実際に自分の周りに体外受精児がいなければ、本当に体外受精児なんているのだろうか?という感覚の方も多いのではないでしょうか。
現に私も、自分が不妊治療をするまではそう思っていました。
そして、不妊治療を終えた今でもそう思ってしまう部分があります。
治療を公にすると、
- 周りからの偏見や通院へのハラスメント
- 治療しなければ授かれないという現実を他人に知られたくない
- 高額な治療費がかかる事を知られたくない
思ってもいないハラスメントを受ける事もありますし、理由がわかったからといって、通院に協力的な方ばかりではありません。
産まれてくる我が子に偏見の目を向けられるかもしれない、と思うとなかなか公にできないという現実もあります。
体外受精って障害のリスクがあるんじゃないの?
年々体外受精で生まれて子供は増えていますが、不妊治療に対する理解がなかなか進まない現状では、未だ偏見や、知らないがゆえに言ってしまい相手を傷付けてしまう言葉はたくさんあります。
知らないがゆえだから仕方ないと思われがちですが、知らないがゆえだからこそ忖度ない言葉に余計に傷つくのです。

体外受精とかやって出来た子供って、大丈夫なの?
これは私が実際に実母から言われた言葉です。
もちろん悪気がない事はわかっていますが、これがけっこうキツかったです。
親には心配をかけたくない、という一心でずっと治療をしていることは伏せていましたが、なかなか授からずもうこれ以上は隠せないだろうと判断し、勇気を出して打ち明けたらこの言葉が返ってきてしまいました。
私たちの母親世代では、不妊治療なんてほとんど聞いたこともないような時代です。
その世代の方達からしたら薬を大量に使い、卵子を体外に取り出精子を針で注入する(私は顕微授精なので)なんて世にも恐ろしい行為なのでしょう。
それしか子供を授かる方法がない私にとっては、とても重い言葉でした。
でも、そう感じたのは自分も心のどこかで大丈夫なんだろうか?という思いがあったからだと思います。
不妊治療専門クリニックでは、ほとんどの施設で体外受精・顕微授精の治療開始前に説明会が行われていると思いますが、そこである程度のリスクの説明はされています。
だからといって治療をしないと授かれないのなら、多少のリスクは覚悟で皆さん治療されていると思います。
しかし、自分でも覚悟はしているつもりでも、周りから言われるととても気になってしまうんですよね。
不妊治療の当事者でさえ偏見を持つほど、知識も理解もない。
それが現在の不妊治療の現実なのだと思います。
不妊治療をしている者同士でも解りあえる訳ではない
では不妊治療をしている者同士なら解りあえるのか?
実はこれがそうでもないんです。
不妊治療経験者といっても、それぞれに原因も違えば治療法も違います。
そして、それぞれの夫婦でどこまでの治療までしかしない、という治療への境界線があります。
それにタイミング法でも不妊治療をしている、という方もいれば体外受精以上でないと不妊治療だとは思わない、という方もいます。
人工授精で授かった人から、

顕微授精までするの?
説明会は行ったけど、まるで人体実験みたいだね、ここまではやりたくないよねって夫と話てた。
と言われた事があります。
その方からすれば、私のしている治療は人体実験なんだなととても傷つきました。
また、同じ体外受精でも、採卵方法が違えば採卵出来る卵の数も違います。
一度の採卵で少ししか採れなかった人からは「ずるい」と言われました。
お互い不妊治療中は仲間でも、どちらかが妊娠するととたんに「もう会わない」なんて事も平気で言われます。
不妊治療や高度生殖医療にもっと知識があれば、治療をもっと理解し、偏見を持つ事もなくなるのではないでしょうか。
理解され、偏見がなくなれば、きっと不妊治療の助成制度もより良いものになり治療も進むと思います。
まとめ
体外受精(顕微授精)は治療も産まれてくる子供の障害も、確かに自然妊娠の方に比べるとわずかですがリスクはあります。
しかし、不妊の原因があり体外受精でしか妊娠する事が出来ない人もいます。
連日通院し、痛い注射や副作用のある薬を飲み、高額な治療費を支払ってもなかなか妊娠出来ない方がたくさんいます。
正しい知識がないのに、偏見だけで「人体実験みたい。」とか「そんな治療した子供は大丈夫なの?」等の言葉を言われるととても心が痛みます。
不妊治療で仕事に穴をあけて、何の罪悪感の無い方はほとんどいないと思います。
妊娠中・子育て中の方と同じようなサポートを受けられるような社会の仕組みに変わっていけると、もっと治療がうけやすくなると思います。
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